社会経済シミュレーションプラットフォーム「EconSimulacra」をオープンソースで公開しました
元の記事を見るLLMエージェント駆動の社会経済シミュレーションプラットフォームをOSS公開
株式会社Simulacra(本社:東京都、代表取締役:高柳 剛弘)は、LLMエージェントを用いた社会経済システムのシミュレーションプラットフォーム「EconSimulacra」をオープンソース(MITライセンス)で公開いたしました。本パッケージはPython製で、PyPI(Python Package Index)から以下のコマンドで利用いただけます。
pip install econsimulacra
GitHubリポジトリ:SimulacraBusiness/econsimulacra
主要開発者:弊社研究員 橋本 龍二(東京大学大学院工学系研究科 博士課程)
背景
Simulacraは、東京大学 和泉研究室発のAIスタートアップとして、人の考え方や行動をAIで再現する「デジタルツインの基盤モデル」の研究開発に取り組んでいます。個人の意思決定パターンを組織や社会のスケールへ拡張するためには、エージェント同士の相互作用や経済環境を含む大規模なシミュレーション基盤が不可欠です。
EconSimulacra は、こうした社会経済システムをLLMベースのエージェントによって表現・分析するための基盤として、研究者・実務者の双方に開かれた形で提供することを目的に開発しました。エージェントベースモデリングとLLMの推論能力を組み合わせることで、ミクロな行動ルールから創発するマクロ経済現象の研究を支援します。
主な機能
EconSimulacra は、以下のような研究・実験を可能にします。
- 家計消費:消費行動の意思決定を行うエージェントによる需要のシミュレーション
- 企業の価格戦略:企業エージェントによる価格設定とそれに対する市場反応の分析
- ナラティブ伝播:ソーシャルネットワーク上での情報・物語の拡散ダイナミクス
- 空間移動:グリッド空間上でのエージェントの位置・行動
技術的な特徴は以下の通りです。
- 内部状態と推論機構を備えたLLM駆動エージェント
- エージェントが移動可能なグリッド空間環境
- 市場相互作用(消費・価格設定)のモデル化
- ソーシャルネットワーク動態(フォロー/アンフォロー、レコメンドシステム、ナラティブ拡散)
- 解析しやすい構造化シミュレーションログ
- 並列シミュレーション実行への対応
- 拡張性の高いモジュラーアーキテクチャ
アーキテクチャ概要
EconSimulacra は次の主要コンポーネントから構成されます。
- Simulator:時間進行とシミュレーション実行を管理。各ステップで全エージェントから行動を収集し、環境に適用します。
- Environment:エージェントの内部状態を含むシミュレーション世界の全体状態を管理。グリッド空間(GridSpace)とソーシャルネットワーク(SocialNetwork)のサブモジュールを持ち、後者には拡張可能なレコメンドシステムも含まれます。
- Agent:観測を受け取り意思決定を行う自律エージェント。組み込みの LLMAgent はOutlinesによる構造化出力を採用し、安定した行動生成を保証します。LLMクライアント、ペルソナ生成、プロンプト構築、メモリ管理が個別のサブモジュールとして提供され、研究者は中核ロジックを変更せずにこれらを差し替え可能です。
- EventManager:政策介入やレジームシフトといった外生的ダイナミクスを柔軟に組み込むためのイベント管理機構。タイムスタンプ・周期・ログ条件などをトリガとしたイベント定義に対応します。
OpenAI API および vLLM 経由の推論バックエンドに対応しており、ローカル実行・クラウド推論のどちらでも利用可能です。詳細はリポジトリのREADMEと examples/ 以下のサンプルをご覧ください。
今後について
Simulacraは、人と社会のデジタルツイン基盤モデルの研究開発と社会実装に向けて引き続き取り組んでまいります。EconSimulacra についても、コミュニティからのフィードバックを取り入れながら継続的に機能を拡張し、社会経済シミュレーション研究および実務応用に資するエコシステムへと育ててまいります。